クレジットカード審査とは?何を見ている?
クレジットカードが後払い式のシステムである限り審査は不可欠だからです。キャッシュレスで買い物がしたいだけであればVISAデビットカードやプリペイドカード、少額であれば電子マネーという選択肢があります。
しかしクレジットカードには、それらにない付帯サービスが豊富で後払いができるというメリットがあります。
これからクレジットカードを申込みたい人、クレジットカードの審査で却下されたことがある人向けに、クレジットカード審査で重要な審査項目や審査担当者がどんな視点で申込審査をしているのか解説します。
クレジットカードの審査項目
クレジットカードの審査基準はクレジットカード会社、カードのグレードによって違いがあります。
しかし審査項目に関してはすべて共通で、審査項目ごとに配点してトータルの点数によって審査通過を決定するスコアリング方式が基本です。
数ある審査項目の中からクレジットカード審査で最も重要な三つの審査項目について解説しましょう。
【審査項目1】年収について~年収はどれだけ必要か?
クレジットカード申し込みでは年収記入欄に記入する年収は自己申告制です。
利用枠50万円超のカードローンでは所得証明書の提出が必須ですが、クレジットカード申し込みでは高額なキャッシング枠で申し込まない限り所得証明書は不要です。
そのためクレジットカード審査では年収金額はそれほど重要ではありません。特に一般カードではカード利用枠は30万円が標準となるので、必ずしも高年収である必要はありません。
割賦販売法では割賦(分割)利用できる枠の上限が定められています。この「割賦利用可能枠」に含まれるのはリボ払いや分割払い以外にも、1回払い以外のすべての支払い方法が含まれます。
割賦利用可能枠の計算を基準として利用枠30万円のクレジットカードに必要な年収を算出することは、以下の計算式を使って可能です。
割賦利用可能枠=【年収-(生活維持費+年間支払見込額)】×90%
上記が割賦利用可能枠の計算式ですが、生活維持費は割賦販売法によって決められています。
世帯人数や自己所有の持ち家かどうか、住宅ローンや家賃の有無によって生活維持費は違い90万円~240万円の幅があります。
一人暮らしで家賃負担がある場合、生活維持費は114万円なので、ほかにクレジットの支払いがない場合、割賦利用可能枠30万円の場合は約148万円の年収が必要となります。
この計算はあくまで割賦利用可能枠の計算に基づいています。しかし、少なくても割賦利用可能枠に満たないカード利用枠は設定されないので、150万円の年収があれば30万円のカード利用枠のカードを作るには十分ということになります。
さらに他社で利用しているクレジットカード、クレジットなどの年間支払額を加算して必要な年収を割り出しましょう。
使っていないクレジットカードでも毎月の支払額も概算し、他社で毎月2万円の支払いがあれば、148万円+24万円=172万円の年収が必要です。
【審査項目2】勤務先は重要な審査項目のひとつ
年収は自己申告制なので、本当の数字を記入しているかどうかには疑問が残ります。
自己申告制の数字には裏付けがないため、申込者の勤務先の情報と併せて審査することになります。
極端な話をすれば、パート・アルバイトで年収300万円という自己申告には信ぴょう性がありません。
審査担当者はこの場合、「年収300万円」よりも「パート・アルバイトである」という情報を重視して、年収は100万円~150万円と想定して審査をすることになります。それもパート・アルバイトを対象とした一般カード(ゴールドカードやプラチナカードなどグレードの高いカードは除く)であれば、すぐに却下の対象となるわけではありません。年収の解説で示したようにそれほど高い年収は必要ないからです。
勤務先は上場企業である必要はなく、中小企業、個人企業であっても勤務年数が長ければ収入が安定していると判断されます。
勤務年数は少なくても1年以上必要で、3年以上であれば問題ありません。問題ないというのは勤務年数不足で却下されることはないという意味で、それ以外の理由で却下される可能性はあります。
勤務形態に関しては正社員のほうが非正規雇用よりも安定していると判断されます。1年以上の勤務年数であればパート・アルバイトが対象となるクレジットカードでは勤務年数が却下の理由になることはないでしょう。
【審査項目3】クレジットヒストリー
クレジットヒストリー(クレヒス)はクレジットカードを含めたクレジットの利用履歴のことです。
クレジットヒストリーは支払い遅延がないことはもちろんですが、残高が多すぎず定期的に利用があると良好なクレジットヒストリーだと判断されるでしょう。
年に1回高額な利用があるよりは、少額でも毎月きちんと利用があるほうが、審査担当者にはよい印象を与えます。
反対に悪いクレジットヒストリーの典型例は、遅延回数が多い、残高が利用枠いっぱいになっている、キャッシングの利用率が高いといった状態のクレジットヒストリーです。
使っていないクレジットカードが多いのも入会特典目的を推測させるのでよくありません。
クレジットヒストリーは支払い遅延がないというだけでは良好とはみなされないのです。
クレジットカード審査での個人信用情報機関情報と社内情報
クレジットヒストリーを確認するには個人信用情報機関の情報をチェックします。また、自社での利用履歴を記録した情報も参照することになります。
個人信用情報機関の情報はほとんど5年でクリアされますが、自社情報は7年から10年は保存されています。
これは法律上帳簿の保管期間が決められているからですが、それ以上保管してはいけないという決まりはないので、半永久的に保存している可能性もあります。
一度長期の延滞をしたことがあるクレジットカード会社は、二度と新規申込はできないと考えたほうがいいでしょう。
個人信用情報機関の種類としくみ
個人信用情報機関とはクレジットカード会社が加盟している個人のクレジットヒストリーが照会できる情報機関で、毎月加盟会社からデータを受け取り審査時にいつでも参照できるように情報提供をしています。
クレジット系の個人信用情報機関はCIC(シー・アイ・シー)ですが、JICC(ジック・日本信用情報機構)という消費者金融系の個人信用情報機関もあります。
この二つはともに貸金業法と割賦販売法で定められた「指定個人信用情報機関」の登録をしています。また銀行などの金融機関が加盟している個人信用情報機関としてKSC(全国銀行個人信用情報センター・全銀協)があります。
CICとJICCは、お互いの加盟会社の会員情報を共有することが義務付けられています。
つまり、クレジットカード審査をする場合にはCICをチェックすることでJICCの登録情報も参照することができます。
つまり、過去にあったような「消費者金融会社ではブラックリスト入りしていても、クレジットカード会社でクレジットカードは作れる」ということは現在ではあり得ません。もちろんその逆もありません。
KSCとCIC、JICCはCRIN(クリン)と呼ばれる情報交流システムによって個人のクレジットヒストリーの遅延・延滞・自己破産等ネガティブな情報の交流を行っていますが、ネガティブ情報の定義がそれぞれ統一されていないのであまり機能していないということもいえます。
CIC(シー・アイ・シー)が提供する情報
CIC情報は大きく三つに分けることができ、それぞれクレジットカード審査に関わりがあります。
申込情報
個人を識別する個人情報以外に、照会日、商品名、契約予定額、支払予定回数、照会会社名等が6ヵ月間記録される。これで申込者が6ヵ月間に、いつどこのクレジットカード会社に申し込みしたのかがわかります。
申し込み情報の件数が多いほどクレジットカード審査では却下される可能性が高くなります。
クレジット情報
CIC情報の中でも最も重要な情報で、この内容がクレジットカード審査の可否を左右します。
契約内容に関する情報
契約日、契約の種類、商品名、支払回数、契約額(極度額)、契約終了予定日、登録会社名等
支払状況に関する情報
報告日、残債額、請求額、入金額、入金履歴、異動(延滞・保証履行・破産)の有無、異動発生日、延滞解消日、終了状況等
割賦販売法対象商品の支払状況に関する情報
割賦残債額、年間請求予定額、遅延有無等
貸金業法対象商品の支払状況に関する情報
確定日、貸付日、出金額、残高、遅延の有無等
入金履歴は24ヵ月間の支払い状況が分かる情報です。
記載されている記号により、個人の入金状況が確認できるようになっています。
「$マーク」は正常入金、「Aマーク」は未払い、「Pマーク」は一部入金といった具合です。
また、ネガ情報(ネガティブ情報)、事故情報やブラックリスト・ブラックと呼ばれる異動情報ももちろん登録されます。
延滞や保証債務の履行は5年、自己破産は10年間記録されます。
起算日は異動発生日ではなく延滞解消日または延滞が解消せずに貸し倒れや和解などが成立してから5年となります。
割賦販売法対象商品の支払状況に関する情報は「割賦利用可能枠」を計算するための情報で、貸金業法対象商品の支払状況に関する情報は年収の1/3までの貸付限度を計算するための情報となります。
利用記録
・利用日、利用目的、利用会社名等
CIC加盟会社がクレジットカード審査時に情報を参照した記録
CICに加盟している企業
CICにはクレジットカード会社や信販会社といったノンバンク以外にもソフトバンクやKDDI、NTTドコモといった携帯キャリア会社も登録しています。
つまり、携帯電話料金の遅延状況もクレジットカード審査で確認できることになります。
CICとJICCはFINEというシステムで情報共有していますが、CICに登録している消費者金融会社やJICCに登録しているクレジットカード会社がほとんどです。今は個人信用情報機関も登録できる業種は多岐にわたっています。
全銀協(KSC)は法規制の対象外でもあり、閉鎖的なので会員情報の交流はありませんが、金融機関でもCICに加盟しているケースも多いので、銀行融資に関してもCIC情報の影響があります。
また銀行融資でも保証会社付きの場合は、信用保証会社がCICに加盟しているので確実に審査ではCICの信用機関情報が参照されます。
クレジットカード審査担当者の目
審査項目や個人信用情報機関情報とクレジットカード審査との関係を解説してきましたが、さらに審査での判断が難しいケース、ポイントとなる点についてご紹介します。
クレジット利用履歴が全く無い場合はどう見られるか
CICやJICC、クレジットカード会社の自社内情報でも全く利用の履歴がない状態は「スーパーホワイト」と呼ばれます。
実際にクレジット利用がないケースと5年以上前に利用があってクレジットヒストリー照会時に既に利用履歴が削除されてしまっているケースがありますが、実際には区別がつきません。
過去にネガ情報(遅延などのネガティブな情報)があった可能性も否定できないので、審査の合否判断は難しくなりますが、スーパーホワイトというだけで審査が却下されることはありません。
CICのネガ登録機関が5年に限定されているのも最新情報での審査をするためなので、スーパーホワイトの場合はほかの審査項目で返済能力を判断することになります。
却下理由がスーパーホワイトだと思っている人はほかに却下理由があるはずです。
延滞記録があるけれどもその後に正常利用しているケース
CICの異動情報になるとほとんど審査では却下となりますが、そこまでには至らない支払いの延滞情報も頻度が多ければ十分却下の理由になります。
何度か延滞後に正常に戻ったという場合は、審査の基本である最新情報を優先して判断することになります。
しかし、遅れの頻度や正常利用の期間から判断して、もう少し様子を見てからというケースもあります。
一概にすべて審査を通過するということでもありませんが、1年以上正常に利用していればそれほど審査にはマイナスとならないでしょう。
まとめ
クレジットカード審査では一つの審査項目だけで却下となるケースはそれほど多くありません。
明らかに与信限度を超えている場合や異動情報がある場合など限られています。それ以外は審査項目の総合的な判断によって審査結果が決まります。そのためこれが良ければ必ず審査を通過するという審査項目もないのです。
その中でもクレジットヒストリーに関しては比較的影響力が高く、ほかの審査項目が弱い場合でも、良好なクレジットヒストリーがあれば審査通過の可能性が高くなります。
今クレジットカードを利用している人は良好なクレジットヒストリーを残すようにしましょう。また何度も審査を落ちてしまう人は、ショッピングクレジットを利用して1年くらいは地道に良好なクレジットヒストリーを作り、信用力を高めることをおすすめします。
良好なクレジットヒストリー作りは安定した収入と返済能力、支払観念を同時に示すことができる唯一の方法です。